発達障害とは、先天的な脳の要因によって、集団生活への適応能力の発達に支障をきたしている状態の総称です。具体的には、精神遅滞、広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などを指します。
発達障害は特定の脳障害によることもありますが、むしろ多いのは単なるばらつき、あるいは一種のタイプと考えられるケースです。例えば、同じように練習してもスポーツが得意な人もいれば苦手な人もいるし、算数が得意な人もいれば苦手な人もいます。つまり、能力の素質には個人差があります。同じような環境で育っても、いろいろな性格の人がいるように対人的な振る舞いにも個人によって傾向があります。集団の中で「だいたい同じ」とみなされる90パーセントの人たち(定型発達)に対して、いろいろの面で「でこぼこ」があり、そのままでは適応がむずかしい場合にそのハンディキャップを発達障害と呼ぶということです。
発達障害については、医学的診断も含めた評価をした上で、それぞれの状態に応じた教育的支援をしていくことが大切です。適切な対応がなされないと、本人は著しい苦痛を味わい、自信喪失からいわゆる「二次的情緒障害」をきたすこともあります。二次的な情緒障害には、反抗挑戦性障害や行為障害(素行障害)などによる逸脱行動、不登校、さまざまな精神疾患などがあります。
全般的な知能の低さによって、学習や生活への適応に支障をきたす状態です。「精神遅滞」は医学的診断名で、福祉や教育では「知的障害」という言葉を使います。
知能指数(IQ)のレベルによって軽度精神遅滞(IQ50〜55からおよそ70)、中度精神遅滞(IQ35〜40から50〜55)、重度精神遅滞(IQ20〜25から35〜40)、最重度精神遅滞(IQ20〜25以下)に分類され、それぞれの状態に応じた教育的社会的支援を受けていくことになります。
自閉症を中心とした発達障害のスペクトラムです。いろいろな特徴がありますが、大きく3つにわけられています。社会性の障害は、視線が合いにくい、一人遊びが多く他者に関心がない、他人の気持ちがわからず集団生活に支障をきたすといったことです。言語を中心としたコミュニケーションの障害は、言葉の遅れ、独特の口調や言葉遣い、ジェスチャーなどの非言語的なものも含めた相互的な意思疎通のむずかしさです。こだわり的な興味や行動は、特定のものを極端に好んだり嫌ったり、決まりきったやり方に固執することで、社会生活に困難をきたす特徴です。これらの3つの特徴をすべてそなえた典型的なケースを自閉症(自閉性障害)といいます。言語的能力は比較的高く、しかし他者への共感がむずかしく、こだわりも強いケースをアスペルガー障害といいます。全般的な知能でみて、知的遅れのない群を高機能広汎性発達障害と呼ぶこともあります。
日常生活や学習課題の中で、注意集中を続けることがむずかしい不注意の特徴と、走りまわったり喋りすぎたり人の邪魔をしたりといった多動衝動性という特徴があります。こういった特徴は幼児期からみられますが、問題になってくるのは主に小学校に入ってからです。注意欠陥多動性障害は、素因と環境因がさまざまな割合で関係した雑多なグループです。養育環境の問題から情緒的に不安定になる反応性愛着障害では、ADHDと同じような不注意や多動がみられることがあります。不注意や多動だけでなく、対人的なコミュニケーションの困難がある場合には、広汎性発達障害の診断となることもあります。これらは一応区別されますが、実際には両方の要因がからんだり、中間的なケースもあります。
全体的な知能は正常範囲なのに、特定の科目の学習に支障をきたすケースを学習障害といいます。計算の苦手な算数障害、読むのが苦手な読字障害、書くのが苦手な書字障害などがあります。注意欠陥多動性障害と合併する場合があります。以前は、学習障害(LD)という概念が広く用いられましたが、その多くは現在の診断基準では広汎性発達障害など他の発達障害と診断されることが多くなっています。
発達障害には、いろいろな運動障害が伴うことがあります。脳の損傷が原因で四肢の麻痺や不随意な運動を伴うものを、脳性麻痺といいます。麻痺はないけれど、全体的に体の動きがぎこちなく不器用が顕著な場合は、協調運動障害と呼びます。それとは別に、奇妙な姿勢や、無意味な体の動きを繰り返すことがあり、これは常同運動といって、運動障害というよりも自閉症などのこだわり的行動の一種です。後からおこってくる合併症としては、てんかん発作があります。意識を失って倒れる発作だけでなく、一瞬意識がとぎれて固まる、突然妙な行動をするなど、いろいろな形の発作があり、不注意の症状や常同行為と区別しにくい場合もあります。はじめて発作がおこった時には、専門医を受診し、脳波や脳MRIなどの検査で診断をつけた上で、発作が繰り返しおこるようなら薬による治療を行います。
子どもがストレスにあって、精神的にしんどい時、なかなか言葉でそのことを表現することはできません。その際には、頭痛、腹痛、だるさなど、さまざまな身体症状で表現されることがあります。例えば、学校に行きたくない子が、自分で「行きたくない」という場合はむしろ少なくて、大抵は身体の不調から休むことになります。もちろん、この場合にも小児科などを受診して本当に病気がないかどうか調べる必要はあります。それで問題がなければ、精神的なストレスの原因はなにか、よく考えて環境を調整していく必要があります。
子どもの睡眠時間には個人差があり、その子のもっているリズムというものがあります。ふだんの睡眠リズムが変わった時には、心身の不調のあらわれである可能性があります。たとえばストレスで緊張している、不安になっている、気が立っている時には、なかなか眠りにくかったり、夜中に目が覚めたりしやすくなることがあります。夜うなされたり、夜泣きで起きたりするのは、昼間の不安のあらわれかもしれません。睡眠時間が長くなり、朝がおきにくいといったことは、心身の不調やうつ状態によることがあります。学校に行きにくいといった心理的理由から、朝が起きづらくなることもあります。不登校やひきこもりで一日中家にいると、夜更かしと朝寝坊を繰り返すうちに昼夜逆転したリズムになりがちです。心理的な原因がなく、夜も寝ているのに昼間の眠気が強い場合には、睡眠自体の病気のこともあり、睡眠専門病院を受診して調べる必要があります。