子どもがストレスにあって、精神的にしんどい時、なかなか言葉でそのことを表現することはできません。その際には、頭痛、腹痛、だるさなど、さまざまな身体症状で表現されることがあります。例えば、学校に行きたくない子が、自分で「行きたくない」という場合はむしろ少なくて、大抵は身体の不調から休むことになります。もちろん、この場合にも小児科などを受診して本当に病気がないかどうか調べる必要はあります。それで問題がなければ、精神的なストレスの原因はなにか、よく考えて環境を調整していく必要があります。
精神的なストレスから、食欲が落ちたり、食べたものをはいたりすることがあります。逆に、いらいらを解消するためにやたらとたくさん食べることもあります。思春期の女の子では、体型を気にして過度なダイエットをした結果やめられなくなり、神経性無食欲症(拒食症)になることがあります。また、ダイエットの反動で過食してしまい、神経性大食症(過食症)になることもあります。これらは、自分ではなかなかやめられないので、家族が気づいて専門医を受診する必要があります。拒食症でやせが極端な場合には、入院施設のある医療機関がよいでしょう。
子どもの睡眠時間には個人差があり、その子のもっているリズムというものがあります。ふだんの睡眠リズムが変わった時には、心身の不調のあらわれである可能性があります。たとえばストレスで緊張している、不安になっている、気が立っている時には、なかなか眠りにくかったり、夜中に目が覚めたりしやすくなることがあります。夜うなされたり、夜泣きで起きたりするのは、昼間の不安のあらわれかもしれません。睡眠時間が長くなり、朝がおきにくいといったことは、心身の不調やうつ状態によることがあります。学校に行きにくいといった心理的理由から、朝が起きづらくなることもあります。不登校やひきこもりで一日中家にいると、夜更かしと朝寝坊を繰り返すうちに昼夜逆転したリズムになりがちです。心理的な原因がなく、夜も寝ているのに昼間の眠気が強い場合には、睡眠自体の病気のこともあり、睡眠専門病院を受診して調べる必要があります。
夜尿については個人差が大きく、小学生くらいまではさほど神経質にならなくてもよいでしょう。昼間のおもらしは、排尿への無頓着によるものが多く、生活の中での意識づけが大切です。便のお漏らしは、排便へのこだわりという側面が強いケースが多く、お決まりの場所でパンツの中にする、排便を拒んで便秘状態になった後に失便する、などのケースがあります。昼間のおもらしが小学生になっても続くようだと、他人の目を気にしない、あるいは過剰に気にするなど、社会性の問題が考えられ、背後に発達障害の要因がある場合もあります。
母親などの家族と常に一緒でないと不安で、離れられないという状態です。分離不安から、幼稚園や学校に行けないということもあるかもしれません。なにかのストレスで、一時的に不安がたかまっている状況や、ベースに発達障害などの要因がある場合などが考えられます。本人を安心させるようなかかわりをしながら、原因を考えていくことが大切です。
家の中では自由におしゃべりできるのに、一歩外にでて幼稚園や学校では一切口をきかないという状態を、選択性緘黙といいます。対人的な不安や軽快、自分自身への自信のなさなどが原因になります。発達障害的要因がベースにあるケースもあります。緘黙のかたの多くは集団の中に入っていけており、「緘黙によって身を守っている」という防衛的な側面もあるのかもしれません。集団生活の中で、本人の不安を軽減しつつ少しずつ自信をつけていくような根気よい対応が望まれます。
0歳から3歳くらいまでの子どもにとっては、母などを中心とした養育者との愛着関係がとても大切です。これらがうまくいかずに、子どもが持続的に大きなストレス下におかれると、反応性愛着障害と呼ばれる状態になります。感情が冷え切って誰にも愛着を示さなくなったり、逆に誰かれなく馴れ馴れしい態度をとったりし、情緒と対人関係は不安定になります。広汎性発達障害や注意欠陥多動性障害などの発達障害と似ているところもあり、鑑別が問題になります。発達的要因と、養育の問題と両方が関係しているケースもあります。養育環境の問題については、児童相談所などとも相談して、家族の環境調整をしていく必要があります。
チックは、短時間になされる無意味な運動や発声で、ついついやってしまうという類のものです。まばたき、顔のしわせ、くびふり、手足の大きな動きなどの運動チックと、瞬間的な発声や、汚い言葉を言ってしまうなどの音声チックがあります。軽いチックが一時的にあらわれるのは、多くの子どもにみられることで、あまり心配ありません。チックは素因による部分が大きいですが、ストレスが引き金になって悪化することもあります。強い運動チックと音声チックが持続するものを、トゥーレット症候群といいます。まずは、環境にストレス要因がないかを検討し調整することですが、症状がひどい場合には対症療法として薬での軽減をはかる場合もあります。チックは、大人になるにしたがって軽減していく場合がおおいです。
ものやお金を盗る、嘘をつく、火遊びをする、他人に乱暴で傷つける、などの行動があり、度重なる指導にもかかわらずあらたまらない場合があります。反抗的な態度の範囲にとどまるものを反抗挑戦性障害、複数の触法行為がみられれば行為障害と呼ばれます。本人の中に、親子関係への根強い不満、不信があり、反応性愛着障害と考えられるケースがあります。また、ベースに注意欠陥多動性障害や広汎性発達障害などの発達障害があって、その二次的情緒障害として生じていることもあります。